子どもが自ら持っているのびる力をひきだす

小児科医 峯島紀子氏から寄稿していただきました。 〜布の手作りおもちゃのすばらしさ〜

子供にとって布は衣服や寝具として私たちが常に一番身近に触れている暖かく柔らかな素材です。その布の感触を楽しみながら美しい色に目を見はり、遊びの楽しさに引き込まれるうちに、次のようないろいろな発達を促します。

1.運動機能の発達

粗大運動 体の大きな動き

手や足を大きく使って遊ぶおもちゃは子どもの運動能力を育てます。グループで楽しく遊び、競争するうちに、歩く、走る、跳ぶ、投げる、蹴る等の移動能力と応用動作が上達し、高度の運動能力が身についてきます。目と手の協応、目と身体運動の強調、肘や肩の屈折と伸展の調節などが促されます。

微細運動 手先の細かい動き

布の遊具で遊ぶ中で子どもたちは、引っ張る、押しつける、はがす、結ぶ、ほどく、またボタンやスナップのはめはずし、ファスナーの開閉などの細かい手先の動作を経験します。人間には他の動物にはない「ものを操作する手」という高度の運動機能が備わっており、そのため意外性に富んだ布のおもちゃは子どもの目を引き付け、目と手の協応という学習の基礎となる全ての力を養います。

2.認知機能の発達

知的発達 知恵がつく

子どもたちが気に入ったおもちゃを遊ぶときは、注意の集中する時間が長くなり、長時間遊んでいるうちに、次のような認知機能の発達が促されます。

  • 色、形の見分け 分類や比較を覚える
    同じものどうしをあわせること(マッチング)から始め、『赤はどれですか?』とたづねられて取ったり(ポインティング)、「これは何?」と質問されて「アカ」と言えるようになる(ネーミング)等、遊ぶうちに色、形と大小、長短などを学びます。
  • 数の概念 多い少ないや数の対応が身につく
遊びのなかで多い少ないを学ぶうちに数の概念が育ち、足し算等楽しめるようになります。
  • 事物の名称 前後左右の位置関係 比較・分類
自分のからだや顔の部分の名前、その他ものの名前を覚えると同時に、おもちゃの具体性が、名前や物の位置関係(前後・左右・上下)、なかまわけ、大小、長短の比較の理解を助けます。

3.言語機能の発達

 楽しく遊んでいる時ほど子どもはよく声を出します。おもちゃのやりとりは同時にことばのやりとりになり、言語の発達が促され、また「あれ」「これ」など代名詞の使い方も覚えます。

4.社会性の発達

グループでゲーム遊びをするうちに、言語のやりとりを繰り返し、人と気持ちを通じ合わせる喜びを感じ、ゲームの順番を待ったりする社会性の発達が促されます。

5.その他

動きの少ない子どもにはゆすったり、くすぐったり、背中をやさしくたたいたり、感覚や平衡覚(前庭刺激)を 使った遊びが有効です。介助しやすく工夫されたおもちゃで、「快」の刺激を繰り返しながら、からだを動かす喜びや、遊びの楽しさがわかり、その後の発達が促されます。

6.まとめ

おもちゃで遊ぶうちに、子どもたちは運動面、認知面、社会性の面での発達はもちろんのこと、情緒の発達も促されます。機能の発達も大切ですが、全人的な成長はもっと重要です。子どもたちは手作りおもちゃとの出会いに感動しながら、情緒的にも豊かな人間へと成長していきます。

遊びはこどもにとって全ての原点です。子どもの持っている力を余すことなくひきだし、その発達を最大限にのばすことは、療育者や親の心からの願いです。この願いを達成するための楽しい媒体として、「TOY工房どんぐり」の布の手作りおもちゃを一人でも多くの方に利用していただきたいのです

峯島 紀子氏のプロフィール

  • 小児科医
  • 中央愛児園 園長